最強最多客席数旅客機の危機一髪
〜2010年カンタス航空32便エンジン爆発事故〜

最強最多客席数旅客機の危機一髪〜2010年カンタス航空32便エンジン爆発事故

カンタス航空32便エンジン爆発事故概要

・発生日:2010年11月4日 木曜日

・発生場所:インドネシア/バタム島 上空

・犠牲者数:0名

・史上最強最多客席数旅客機A380が乗客乗員469名を載せ、シドニーに向う途中、インドネシアのバタム島上空で左翼第2エンジンが破損・発火した。懸命の操縦対応で無事に緊急着陸し、全員脱出できた。

カンタス航空32便エンジン爆発事故機体情報

カンタス航空32便

カンタス航空32便
カンタス航空32便

・機種:エアバスA380-842

・機体記号:VH-OQA

・出発地:ロンドン・ヒースロー空港(LHR)

・経由地:シンガポール・チャンギ国際空港(SIN)

・目的地:シドニー国際空港(SYD)

カンタス航空32便エンジン爆発事故経緯と原因

史上最強最多客席数旅客機A380

2010年11月4日、ロンドンからシドニー行きのカンタス航空32便はシンガポール・チャンギ国際空港で給油し、目的地に向かった。

運行飛行機のエアバスA380は、世界最大の旅客機であり、2階建てで500以上の座席数を持つ。

A380座席図一例
A380座席図一例

機体左右の翼に2つずつ合計4基の高バイパス比ターボファンエンジンが取り付けられ、1基ごと32.66トンの推力を発生できる。さらに、機体の隅々まで25万以上のセンサーがあり、中央監視システムで全機器のステータスを確認でき、全ての故障をリアルタイムで警告する最新技術が装備されている。

A380のエンジン
A380のエンジン
A380の操縦システム
A380の操縦システム

A380はそれまで自動化レベル最も高く史上最強の旅客機と言われている。

離陸4分後エンジン爆発で危機的状況

午前9時57分、乗客440名と乗員29名を載せたカンタス航空32便は離陸した。4分後、大きな爆発音が2回聞こえ、エンジン2号機が爆発した。機長は即座オートパイロットを中止し、マニュアル操作に切り替えた同時に、管制センターに救助信号を発信し、シンガポール・チャンギ国際空港への引き返しを求めた。

事故後の2号エンジン
事故後の2号エンジン

副操縦士が中央監視システムの故障情報を分析したところ、エンジンが過熱していることが分かった。発火してしまう前に燃油供給を切断しようと操作したが、効果がなく故障警告が消えなかった。エンジンの発火は飛行中最も危険な故障であるため、操縦士は素早く消火装置を起動させ、ようやく過熱の警報が消えた。

しかし、中央監視システムから別の故障警報が絶えず出続けた。通常の飛行訓練では多くても同時2、3個の模擬故障対応しかなかったが、この時、故障警報は58個も出た。同じ時刻のカンタス航空の運行管理センター内では、送られた機体のリアルタイム情報は、機内あらゆるところが故障していることを示していた。

カンタス航空32便がこれからどんな結末に向かうかはその時、予想できる人は誰もいなかった。

爆発破片が操縦に大きな問題を引き起こした

窮地に落ちいたカンタス航空32便は早く緊急着陸する必要がある。

離陸してまもないこの巨大旅客機A380はチャンギ国際空港に引き返すことが唯一の選択肢であった。チャンギ国際空港は半径300キロ内一番大きい空港であり、滑走路が4000メートルあるため、他の空港より無事着陸の可能性が高い。

しかし、引き返すには180度の旋回が必要であり、問題は破損状況さえも把握し切れていない機体で操縦に耐えうるかにあった。機長は副操縦士を客室に行かせ、エンジンの破損状況を目視で確認させた。エンジン2号機の大破で、爆発の破片は機翼の表面を貫通し、飛行コントロール用のケーブルまで切断した。そのため、中央監視システムで数多くの警報が出て、操縦の難しさも大きく増し、機体がいつ操縦不能に落ちいても不思議ではなかった。

爆発破片の飛び方
爆発破片の飛び方
切断されたコントロールケーブル
切断されたコントロールケーブル

チャンギ国際空港へ引き返す

チャンギ国際空港へ引き返すには機体が180度の旋回が必要である。コントロールケーブルの破損により、操縦は紛れもなく大きなリスクがあった。機長は大きな決断に迫られた末、探りながら少しずつ左への旋回操作を行った。幸いに機体は操作に耐え、チャンギ国際空港の方向に向かった。

しかし、問題はそれだけではなかった。この巨大旅客機には105トンの燃料があり、爆発の影響で輸送ポンプが機能不全に落ちいて、排出もできなかった。機体が重ければ重いほど、着陸時必要な滑走路も長くなる。燃料排出によって機体を軽くすることができない以上、着陸時の速度コントロールが非常に重要になった。

シミュレーションソフトから着陸時の速度が時速270キロが算出されたが、操縦士たちは計算結果に疑問を持った。着陸時の速度は低すぎると機体が上昇力を失い、重力によって地面に叩き付けられる危険性があり、逆に速すぎると滑走路が足りなくなる可能性がある。操縦員たち議論した結果、最終的に時速307キロの速度で着陸することを決めた。

一発勝負で無事着陸

着陸時の精密操縦操作に対して、機体はどこまで正確に反応してくれるかは、当時の機長が自信がなかった。そのため、機長は事前確認を行った。左への旋回は問題なさそうだが、右への旋回は制御しにくいことが分かった。チャンギ国際空港の滑走路方向への調整は左傾斜のみで一発で照準を合わせることが求められた。

機長は地上準備の完了を待って、空港の滑走路に向かって方向調整を慎重に行った。幸いなことに、一発で調整でき、機長はエンジンの出力を調節しながら、機体速度を目標値に落とし、着陸を試みた。

カンタス航空32便の動き
カンタス航空32便の動き

A380のエンジン4基のうち2号と3号が逆噴射装置が装備されているが、2号エンジン破損のため、逆噴射は通常半分の性能しかなかった。それに加え、飛行コントロールケーブルの切断により機翼にある減速装置も作動しなくなった。機長ができるのは全力でブレーキペダルを踏むしかなかった。幸いことに、漸くあと150メートル滑走路が尽きるところで機体が止まった。

最後の危険性が消え、全員無事脱出

緊急着陸ができても、危機はまだ終わらなかった。

爆発の破片に貫通された燃料タンクから燃料が漏れ、その横にあるのは熱いブレーキであった。引火の恐れを配慮し、機長は非常用脱出シュートを使用せず、乗客は着陸後も機内に留まることを判断した。

さらに、操縦士は全エンジンを停止させようとしたが、第1エンジンは操作に反応せず作動したままだった。消防隊は第1エンジンに大量の水を注入しても停止しなかったが、消火液をエンジンに吹き付けることで、着陸3時間後ようやく第1エンジンが停止した。

事件発生5時間後、搭乗していた乗員乗客469名は全員無事脱出した。

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